メンデルスゾーン/序曲《フィンガルの洞窟》作品26

メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn=Bartholdy:1809~1847)は、ドイツのハンブルクで生まれた作曲家、ピアニスト、オルガン奏者、そして指揮者である。幼いころから豊かな才能を発揮し、わずか12歳で「弦楽のための交響曲」を作曲するなど、その38年という短い生涯のなかで、多数の美しいピアノ曲をはじめ、交響曲、管弦楽曲、室内楽、オルガン曲、さらには宗教曲も作曲し、その数は500曲をはるかに上回るものであった。

そんなメンデルスゾーンが音楽史に残した業績といえば、グリーグや瀧廉太郎などの優れた作曲家を輩出した「ライプツィヒ音楽院の設立」と、バッハ作曲の『マタイ受難曲』の「蘇演(1829年、ベルリン)」である。蘇演(そえん)とは、文字通り、長く埋もれていた作品を演奏することでよみがえらせることである。

その蘇演の後、メンデルスゾーンは、イギリスへ演奏旅行を行った。その際にスコットランドを訪問し、そこで感銘を受けて作曲したのが、交響曲第3番「スコットランド」(作品56)と今回演奏する演奏会用序曲『フィンガルの洞窟』である。

さて、「フィンガルの洞窟」とは、かつて(12世紀ごろ)ノルウェーに支配されていたスコットランドの西岸に位置するヘブリディース諸島(Hebrides)のスタッファ島にある海食洞(波の浸食作用により形成された洞窟で、日本では、伊豆の堂ヶ島などが有名)である。このスタッファ島は自治的にはアーガイル・アンド・ビュート地域に属しており、アーガイルといえば、セーターの柄として、ダイヤモンド模様を規則的に配置したタータンチェック、そう、アーガイル柄が先ず思い浮かぶ。



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