作曲者のカミーユ・サン=サーンス(Camille Saint-Saëns) は1835年10月9日にパリで生まれた、フランスの作曲家、オルガニスト、ピアニストである。早くから音楽の才能を発揮し、13歳でパリ音楽院に入学してオルガンと作曲を学んだ。そののち18歳でサン・メリー教会、22歳でマドレーヌ教会というどちらも美味しそう・・・ではなく、権威のある教会のオルガン奏者に就任した。
サン=サーンスが作曲したチェロのための曲といえば、1886年に発表した組曲《動物の謝肉祭》の第13曲〈白鳥〉が圧倒的に有名だが、《チェロソナタ第1番 ハ短調》《ロマンス ヘ長調》《アレグロ・アパッショナート ロ短調》などがこのチェロ協奏曲第1番と同時期に作曲されている。余談であるが「ロマンス」というのは、誰かへの恋愛感情や色恋沙汰を表現しているのではなく「器楽のための抒情的な歌曲」というジャンルのことである。
さて、本題のチェロ協奏曲だが、サン=サーンスは生涯にチェロ協奏曲を2曲完成させた。しかしながら第2番のほうは作曲者の円熟期(1900年代)に作曲されたにもかかわらず、あまり演奏される機会がない。筆者もその作品に触れたことはなく「サン=サーンスのチェロコン」といえばもっぱらこの第1番のことである。
楽曲の構成は全3楽章となっているが、切れ目なく譜面が書かれていること、第1楽章が完全なソナタ形式となっていないことなどから、3部構成の単一楽章の形式であるともとれる。
楽曲の構成は全3楽章となっているが、切れ目なく譜面が書かれていること、第1楽章が完全なソナタ形式となっていないことなどから、3部構成の単一楽章の形式であるともとれる。
第1楽章ーアレグロ・ノン・トロッポ イ短調 2/2拍子
はじけるようなオーケストラの和音に続いて独奏チェロが第1主題を奏でる。扉を開けると一斉に飛び出してくる、小学校の中休みを連想するような音の動きである。一方、第2主題は対照的に弦楽器の長音符を従えての流麗な旋律となっている。躍動した短い展開部を経て再現部となる。その第2主題の再現のあと切れ目なく第2楽章に入る。
第2楽章ーアレグレット・コン・モート 変ロ長調 3/4拍子
弱音器を装着した弦楽器が舞曲風な主題を奏でる。独奏チェロがそれに悠然と応える。楽章の中ほどでは独奏チェロの短い分散和音のカデンツァが挿入される。続いて木管楽器で主題が再現されたのち、独奏チェロの応答部分が低音で再現され、切れ目なく第3楽章に入る。
第3楽章ーアン・プゥ・モワン・ヴィト イ短調 2/2拍子まず、第1楽章の第1主題が再現される。その主題の後半部分を独奏チェロが連呼したのちに、そのフレーズをモチーフとした第1主題を提示する。その後、抒情的な主題とは対照的に、独奏チェロの技巧的なフレーズが繰り返される。ヴァイオリンの音階進行による経過部を経て、第2主題となる。穏やかなメロディーであるが、その終結部において独奏チェロは、チェロが出すことのできる最低音からヴァイオリン奏者もびっくりの超高音までを順次進行で奏でる。その高音域にはハーモニックスという技法が用いられており、ソリストの見せ場ともなっている。その後、第1楽章の第1主題や展開部が再現されたのち、イ長調に転じて盛大に全曲が結ばれる。
この曲は「サン・サーンスの作品33っす」。ぜひ、早口で10回言ってみてほしい。