DIE KOKUBUNJI PHILHARMONIKER
 ■ 国分寺フィル演奏会定期演奏会(2006年〜)第33回定期演奏会

ワーグナー:歌劇「ローエングリーン」第一幕への前奏曲

ワーグナーの歌劇の特徴は恐ろしく長いということです。ちなみにローエングリーンのCDは4枚になります、単純計算で4時間半、聴衆もタフでないといけません。

あらすじ
ある男、先代の大公からその娘エルザを嫁にもらう約束がありながら彼女がウンと言わなかったので別の女性と結婚しましたが、逆恨みしてエルザが彼女の弟を殺したと言いふらしました。実はその女房が魔法で白鳥にしてしまっていたんです、いけませんねぇ。
ローエングリーンは白鳥の姿をした天使の引く船に乗って現場に行きエルザを救い、結婚することになりますが、その際自分の名前を問わないことをエルザに誓わせました。案の定エルザは約束を破ってしまい、ローエングリンは去ってしまいます。ツルの恩返しも見ちゃいけないと言ったのにそれを守らなかったとツルが飛んで行ってしまうあたり似てますね。
弟はローエングリーンに魔法を解いてもらい姉弟は再会できますがエルザは弟の腕の中で死んでしまいます。

この歌劇は本日演奏する序曲で始まります、正真正銘の幕開けの曲です。何人かの人が死んでしまう悲しい物語ですが、サスペンスドラマのようなベタな感じではなく奥に潜む悲しい雰囲気を大事に再現出来るように練習してきました。

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容

ヒンデミットは1895年にドイツで生まれ1963年に亡くなりました、相当に器用な人で、いろいろな楽器を上手に演奏したそうです。彼はユダヤ人ではなかったそうですが、文化芸術を支配の道具とするナチスの迫害を受け、一旦はスイスに、更にアメリカに亡命しました。彼の良き理解者にフルトベングラーがいてナチスに勇敢に対抗したと聞きます。

ヒンデミットはたくさんの曲を作りましたが多くは室内楽でオーケストラの曲を耳にする機会はあまり多くはないようです。どっちかというと研究者というか教育者として日本では知られています。性格的にはいたずら心の旺盛な人だったようで、そんな人柄からか、「午前7時に村の井戸端で 二流楽団が初見で演奏する『さまよえるオランダ人』序曲」なんて曲を書いていたりします、確かに「さまよえるオランダ人」のテーマは出て来ますが妙な曲ですよ、そんなCDを持っている私って変?

さて、今日演奏します曲は彼がアメリカに滞在中であった1943年に作曲されたもので、ウェーバーの作品を題材に選んで4つの楽章の曲に仕上げられました。アメリカで作曲したためだと思いますが、楽譜のタイトルには英語が使われています、これはヒンデミット自身の意志でそうなったということです。

第1楽章 Allegro (ウェーバー原曲:ピアノ連弾のためのアレグロOp.60-4)
原曲はピアノの曲ですから当然音色の変化には限りがあります、ヒンデミットの手にかかるとちょっと田舎臭いメロディーがいろいろと形を変えて現れ、標題にある交響的の名に恥じない多彩な響きの世界が広がります。
第2楽章 Turandot,Scherzo (原曲:劇音楽「トゥーランドット」Op.37より序曲と行進曲)
荒川静香のイナバウワーのバックに流れていたのは同じトゥーランドットでもプッチーニの作曲によるものです、題材は同じですがウェーバーの方が先駆者なんです。そのウェーバーの作品からテーマをもらって変奏曲にしました。
トゥーランドットは中国のお姫様の名前で、3つの謎々を出して「解けたら結婚してあげる〜」、「解けないと殺しちゃう〜」、おまけに解いてしまったら今度は「結婚いやだ〜」。「なめんじねぇぞコラァ!」。物語の中にピン、ポン、パンという3人の大臣が登場します、幼児向け番組の走りだったんでしょうか。
第3楽章 Andantino (原曲:ピアノ連弾のためのアンダンティーノOp.10-2)
大きく2つの部分に分かれます、とある情報によりますと前半は原曲の雰囲気に近いそうです。後半はそれにフルート超絶技巧が加わります、請うご期待。ウイリアム・テルもフルートが大活躍する部分がありますが、どっちがいいかとの問いに、ある笛吹き「どっちもイヤ」
第4楽章 March (原曲:ピアノ連弾のための行進曲Op.60-7)
原曲はかなり遅いテンポで演奏される葬送行進曲風のもなのですがが、速弾きしたらどんな風?とやってみました、結果はお聞きの通り。ホルンがステキ、「よっ、待ってました」

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

ベートーヴェンの名前は小学生でも知っていて、ある意味人気者と言えます。今日のお客様でオリエンタルラジオを知らなくてもベートーヴェンを知らない人はまずおいでにならないことでしょう。

でも、彼に対する周りの評価は音楽的な才能を除けばあまり芳しいものではなかったようです。自分のことは棚に上げて他人を激しく責める、おまけに、いわゆるイケメンじゃないとあっては社交界でもあまり近づくご婦人はいなかったということも何となくうなずける話です。もしベートーヴェンのルックスが良くて「デマチ」がいるような状態で、更に金持ちだったらだったらどうなっていたのやら。

改めて考えてみるとずいぶん古い人なんですね、江戸末期の1770年の生まれといいますから、生きていれば236才、同世代の有名人はなんと言ってもナポレオンです。そのころのニュースといえば田沼意次が老中になったとか、アメリカの独立戦争が始まったとか、最後の女帝後桜町天皇がお隠れになったというところでしょうか。

ベートーヴェンの生涯については色々な出版物があって話題に事欠きませんが、今もって各方面で研究が進められており、死因についてはつい何年か前に新説が登場し、もっともらしい根拠が示されているため、今後支持が広がるかも知れません。その説には、おや?と思う内容を含んでいますが、ここはそんな議論をするところではないので止めておきます。「あいつらまだ正解が出ないのかなぁ」と天国でベートーヴェンがニヤニヤしていますよ、きっと。

耳の調子が悪くなり、ついには聞こえなくなったというのはあまりにも有名な話ですが、箸の様な棒の先を口にくわえ反対側の端をピアノに当てると振動が伝わってきてそれを聞いていたという話をどこかで読みました。真似をして試したのですが、棒の先端は滑って逃げてしまうし、歯は痛くなるしうまくいきません、箸にも棒にもかからない・・・。

この頃の音楽家は殆どが貴族をパトロンとして生活している状況でした。しかし、貴族は度重なる戦争への出費がふくれて富が失われ、おまけに民衆の経済活動が活発になって、お金が勝手にそちら方面で回ってしまいパトロンとしてはだんだん存在が怪しくなってきました。そんなわけで音楽会も貴族が聴衆という状態から少しずつ変わっていき、作られる曲もそれに伴って変化していきました。

この曲が完成したのは1804年、ベートーヴェン34才の時でした、ナポレオンに捧げるつもりだったけど止めてしまったそうです。もとよりかなりの貧困層に生まれたベートーヴェンの意識は民衆そのものと言っても良く、フランス革命の時にナポレオンを絶賛するベースになっています。そんなナポレオンが皇帝になったと聞けば、もともと怒りっぽい性格ですから切れてもおかしくないですね。

この曲はこれまでの交響曲と比べ、演奏時間が長い、第2楽章に葬送行進曲がある、終楽章が変奏曲になっている、という特徴があります。

第1楽章 Allegro con brio(速く、いきいきと)
力強い2発の和音で幕を開けます、短い音なのですが安定した和音になっていまして、それがちゃんとした和音に聞こえれば良い演奏と言えます、今日は成功するかな?
ところで、ベートーヴェンってこのように「ジャン」とか「ジャン、ジャン」で始まる曲が多い様な気がしますね。
この頃の曲は一通りの和音の流れが終わると次に進むということが普通でしたが、初演当時「写譜屋が間違えた」と言われたほど突飛なところにメロディーが始まっていたりします。でも我々現代人はそんなことにはもう慣れっこになっていてあまり違和感なくごく当たり前に楽しんでいます。感覚の進歩というべきか後退というべきか・・・。
第2楽章 Adagio assai(うんとゆっくり)
葬送行進曲で厳かな雰囲気が漂います、実際に告別式のBGMとしてよく使われています。 一説によると、とあるイギリスの軍人のために書いたとありました。
荘厳ですが湿っぽくありません、文化の違いかバーチャルの世界のためかよくわかりません。因みに行進曲といえば普通2拍子ですが、二本足で普通に歩く場合はそれで合います。しかし、厳かなシチュエーションでは足は交互に出すのではなく、出した足にもう一方を寄せ、一旦直立し、引き寄せた足を今度は前にという運びになります、そうすると4拍子の行進になるんですね。
第3楽章 Allegro vivace(速く、活発に)
この楽章はScherzo(スケルツォ)という形のもので、速い3拍子です。ごく初歩的には3拍子は三角形を空中に描くように指揮棒を動かしますが、このスケルツォでそんなことしたら指揮をしているのか邪魔しているのかわからなくなりますので1小節毎にぴくぴくと棒を動かして合図します。
途中にホルンのカッコイイ部分があります、お楽しみに。
スケルツォは諧謔曲(カイギャクキョク)と訳されます、諧謔を広辞苑で引くと"おもしろみのある戯言。おどけ。しゃれ。滑稽。ユーモア。"とあります、なるほど、四角四面な印象の残る演奏はしてはいけないんですね、では諧謔的に演奏しましょう。
第4楽章 Allegro molto(うんと速く)
終楽章としては異例の変奏曲の形式が採られています、変奏のテーマは自分の別の作品「プロメテウスの創造物」から持ってきました、他人の作品から持ってきたわけではないので盗作にはならないわけですが、このテーマがたいへんお気に入りだった様子で、4つもの作品に使われています。そのテーマが10種類の異なる形で演奏されます、聴きながら一つ目、二つ目と数えてみるのも面白いと思います。
さて、前の楽章は諧謔曲だとご紹介しました、この楽章のどこかに遁走曲(トンソウキョク)と呼ばれる部分があります、どの辺で「トンソウキョクだな」と感じられるか気をつけていてください。参考までに広辞苑をまた引いてみました、遁走とは" のがれ走ること。にげること。"ですって。意外と言っては最初に訳した人にはなはだ失礼なことですが、言葉と曲の雰囲気が良く合ってます。
解説:林 範章
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