DIE KOKUBUNJI PHILHARMONIKER
 ■ 国分寺フィル演奏会定期演奏会(2006年〜)第37回定期演奏会

フランツ・リスト:交響詩「レ・プレリュード」

 リストという人はハンガリーで生まれました。父親が音楽を趣味とする人だったようで、十分な動機付けがされていました。ピアノのレッスンを始めてすぐに頭角を現し、若い頃はピアノ演奏の名手として鳴らしましたが、晩年はステージに上がることはなくデスクワークと後進の指導に軸足を移していったそうです。現役時代、パフォーマンスにも気を遣っていたようで、自分の弾くピアノに細工をし、演奏中に弦を切るということをして聴衆を驚かせたそうです。作曲もする執筆もする演奏もする、結構なマルチタレントでした。自由な生き方をした人のようで、表現方法も自由であったとか。そして新しい表現方法である交響詩なるものの言い出しっぺでもありました。彼は13曲の交響詩を残しまして、今日演奏します「レ・プレリュード」は3番目に当たり、最もよく演奏されるものです。ちなみに最後に創った交響詩の標題は「ゆりかごから墓場まで」となんともありがたい名前が付けられています。

 さて、交響詩って何でしょう?ウィキペディアによりますと「管弦楽によって演奏される単一の楽章からなる標題音楽のうち、作曲家によって交響詩と名付けられたものを言う。」とあります。いろいろな解説書にも書いてありますがこれが一番わかりやすいのでご紹介しました。
 人生、山あり谷ありとはよく聞く例えですが、変わったところで「愛と苦悩、田舎の生活への渇望、闘争など、人生は死への前奏曲」と言ったフランスの詩人がおります。その考えにナルホドと食いついたのがリストで、早速得意の交響詩の形にしてみました。前奏曲はあちらの言葉で“プレリュード”と言いますから、ひねらずにそのまんまを標題にしたわけです。どうでも良いことですけど、ホンダの乗用車でプレリュードというのがありましたっけ。ついでにアコード、コンチェルトなんて音楽用語を使ったのもありました。

 何となく死への前奏曲なんて聞かされると暗く重苦しく感じるかも知れませんが、「人生色々」を音楽で表現しています。ご自身のこれまでの人生を思い浮かべながらお楽しみ下さい。曲のどの辺で愛を感じ、どの辺で田舎に泊まろうと感じましたでしょうか?機会があったら教えていただけるとうれしく思います。

シャルル・フランソワ・グノー:歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽

 ドイツのあの有名なゲーテが創った戯曲に「ファウスト」(1831完)という題名の作品があります。ファウストとは人の名前で、15世紀頃にドイツに実在していたということです。その人の伝説めいた奇行話をまとめて戯曲にしたのが、ゲーテのオリジナルです。物語としては悪魔が出てきたりけっこう現実離れしていますが、恋人が妊娠したら逃げちゃうあたり、妙にリアルだったりもします。話の筋はそこら中に情報が出回っていますのでここでは詳細は触れずにおきます。

 グノーは原作の第1部を5幕に及ぶフランス語のオペラに仕立てました。「フォスト」と言うそうで、初演は1859年のことでした。手塚治虫の漫画にも「ファウスト」というのがあり、同じ原作を元にしているそうです。元が元だけに長いのかなと思いますが、いずれ読んでみたいと思います。

 さて、グノーのオペラの第5幕「ワルプルギスの夜」第2場にあります宴会のシーンに演奏されるバレエ音楽があります。オペラの中にバレエを入れるというのがフランスオペラのお決まりのスタイルだったそうですが、初演の時にはなく、それから10年経ってからこの形に従って追加されたそうです。追加されたバレエ曲は7曲あり、今日はそれを演奏いたします。
 日本で最初に上演されたオペラはこの「ファウスト」でした。時は1894年11月24日、場所は上野の奏楽堂でした。そんな史実を記念して、11月24日はオペラの日とされているそうです。
 舞台では、クレオパトラ、トロイのヘレン、フリネなどの美女たちが次々と登場してファウストを誘惑しています。ほれ、そこのダンナ、鼻の下伸ばしてちゃぁいけませんぜ。

1曲目:Danse Prelude - Valse Modere
    (ダンス・プレリュード−ヴァルス・モデレ[適度な速さのワルツ])
2曲目:Helene et les jeunes Troyennes : Cleopatre et les jeunes Nubiennes
    (エレーヌとトロイ娘たち:クレオパトラとヌビア娘たち)
3曲目:Entree des junes Nubiennes (若いヌビア娘たちの入場)
4曲目:Variation de Cleopatre (クレオパトラのヴァリアシオン)
5曲目:Entree des junes Troyennes (若いトロイ娘たちの入場)
6曲目:Variation d'Helene (エレーヌのヴァリアシオン)
7曲目:Final (フィナーレ)
    Entree de Phrynee (フリネの入場)

ヨハネス・ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68

 夏が過ぎ、涼しくなってきた頃、我等が指揮者曰く「ブラームスを練習するのに良い季節になりました」。その言葉の通り、この曲を演奏するにはかなりの体力(もしかして耐力)と精神力が要求されます。ミーハーな情報です、「のだめカンタービレ」という漫画をご存じの方も多いと思います。そして、実写版のTVドラマをご覧になった方もおいででしょう。その中で演奏されたブラームスの「交響曲第1番 千秋真一&R☆Sオーケストラ(のだめカンタービレから)」というCDが売られています。ちなみに「のだめカンタービレ 巴里編」もあるそうです。

 ブラームスは1833年にハンブルグで生まれました。父親はその地の劇場付き楽団のコントラバス弾きでして、音楽の手ほどきはその父から受けました。けっこうな酒飲みだったらしいのですが、こっちの手ほどきは誰にされたのか明らかではありません。恋はしますが生涯それが成就することはありませんでした。性格的に慎重居士であったとされていまして、そのせいでしょうか、第1番の交響曲についてこんな曲にしようと決めてから完成するまで21年もかかっています。ただし、集中して取り組んだのは完成前の5年間ぐらいのようです。完成は1876年(明治9年)でした。丁度あのグラハム・ベルが電話を発明した年になります。芸術関係では前年に画家のミレーが亡くなっています。日本では翌年1877年(明治10年)に西南の役が起こりました。西郷さんはこの曲の初演を聴きに行くチャンスがあったのに、惜しいことをしたでごわす。

 さて、長い年月を掛けたこの作品について、ハンス・フォン・ビューローには「ベートーヴェンの交響曲第10番」と評され、交響曲史上でも最も重要な作品となっていると言われています。ここで私、ブラームスに代わってビューローさんに文句を言います、「創ったんはワシじゃ!ベートーベンの代わりじゃねぇ!!!」以上。他にほめ方があるでしょうにねぇ。ところで皆さんはベートーベンの10番と感じられるでしょうか、それともブラームスの1番と感じられますでしょうか、興味のあるところです。
 妙なほめ方をしたビューローって誰かと言いますと、職業指揮者の走りなのだそうです。それまではだいたい作曲家が自らの曲の指揮をしていたということです。職業指揮者と言えば、小澤さん、文化勲章おめでとうございます。

第1楽章:Un poco sostenuto - Allegro(少しゆっくり目に − その後早く)
 低音の楽器による力強い51発の「ド」の連続で序奏が始まります。序奏は8分の6拍子なんですが、51 発の「ド」が終わってからはメロディーが1拍目から始まらないように書かれています。ならば、最初から音符を1個ずらしてメロディーの始まりが1拍目になるようにすれば簡単なように思えますが、そうしなかったところにブラームスのこだわりがあるようで、このずれが程よい緊張感をもたらしてくれます。その緊張感を味わっていただければ大成功です。
第2楽章:Andante sostenuto(ほどよくゆっくり、音の長さはたっぷりと)
 前の楽章の力強さと緊張感とは対照的に穏やかな雰囲気です。珍しいところではヴァイオリンの独奏があります。全体的に穏やかで美しい曲想なのですが、全体がほんわかとしているわけではなくて、1拍の時間の中にある楽器は3つ、ある楽器は2つ音符を演奏するように書かれていて、ちょっと緊張するような雰囲気があります。美しいメロディーが単調にならないよう、より美しく聴こえるための隠し味と思われます。
第3楽章:Un poco Allegretto e grazioso(ちょっぴり軽快で優雅に)
 クラリネットの甘美な歌い出しで始まり、第2楽章に続いて美しい音楽になっています。「N村さんのお腹の中にあるテンポで始めてください」とは指揮者の弁、それにしてはちゃんとテンポを示しているように見えますけど……。その辺に駆け引きがあるということを前提にお聴きになると、おもしろいかも知れません。
 古典的な交響曲ですと、この楽章は3拍子の舞曲を持ってくるのが習わしとなっています。ブラームスは古典回帰を企てたということになっていますが、舞曲を配することはしませんでした。なぜだかその理由はわかりません。
 3楽章と4楽章の間はあけずに演奏しますので、咳払いはちょっと我慢してください。
第4楽章:Adagio - Piu` Andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu` Allegro
    (かなりゆっくり−普通にゆっくり−非常に速く、かつ快活に−今までより速く)
 さあお待ち遠さま、曲のはじめからひな壇の一番高いところでじっと待っている3人組がいます。ここから先に出番がありますので、活躍をお見逃しなく。
 さて、重い感じで始まりますが、それが過ぎるとアルペンホルンの音を模したおおらかなメロディーが流れます。アルペンホルンとは、キセルのお化けのような格好をした楽器でアルペン地方の民族楽器です。この部分は作曲家シューマンの妻であるクララ・シューマンへの思慕の情を表していると言われています。アルプスの谷間に響き渡るホルンの音を存分にお楽しみください。音とは違って本人たちは息が苦しく、真っ赤になって吹いていると思います。
 管弦楽全体が一旦止まり、弦楽器とホルンだけの音楽が始まります。ここにまで来ると「この曲どこかで聴いた」と思う方は多いはずです。コマーシャルで使われていたりします。おしまいの方は冒頭でお話しした通り体力勝負になりますが、それを補う強い精神力で大いに盛り上がって終わります。
解説:林 範章
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